世界最大の「油画村」として知られる、深セン 大芬村。
「世界で一番ゴッホを描いた男」の映画が大ヒットし、海外にもその名が知れ渡りましたが、大芬村は絶えず変化を続けています。そして2019年現在、村の様子は大きく変わりました。
どのように変わったのでしょうか?
Shenzhen Fanでは、去年(2018年12月) に大芬村を訪問し、「世界で一番ゴッホを描いた男」の主人公、 趙小勇(チャオ・シャオヨン)さんのインタビューなどを行いましたが、当時は大規模な河川工事が大芬村内で行われていました。
前回の訪問記事はこちらから
今回、河川工事は完了し、街の景観も様変わりしています!
目次
河川工事完了後
大芬村といえば何千人もの画工が住み込みでひたすら複製画を描きつづける、というイメージが強いですが
以前に訪問した時とずいぶん印象が変わっていました。
去年までずっと河川工事が行われていて、村全体へのアクセスが良くありませんでした。
道(河)の周りに大きな壁ができていたため、大芬村内の各店舗に行くには別の入り口からぐるっと回らなければならなかったのですが、
工事が完了して非常にすっきりしましたね。
そしてこの大芬村。最近ある変化が見られています。
街は観光地化
大芬村は、国策により観光地化され始めているのです。
特に今年になって行政の指導が入り、商業的過ぎる設備を取り締まり始めたのだそうです。
その結果、雰囲気が随分変わってきました。
個人的なイメージでは、(平日に行ったからかもしれませんが)全体的に綺麗になり、東南アジアのようなゆったりとした雰囲気を感じます。
具体的には、どんな点が変わってきたのでしょうか。
ギャラリーの増加
まず、ギャラリーが増加しつつあります。
もちろん今までもギャラリーはあり、(大芬村の地価が高くなっている影響で)画工たちは村の外に住むようになってきていましたが、村内ではギャラリーを前面に出し、工房は郊外に、という流れが定着してきているようです。
趙小勇さんのギャラリーにも変化が
先回インタビューさせていただいた趙小勇さんのギャラリーにも少しお邪魔しました。
外観が変わっています。入り口が改装されていました。
趙小勇さんは、日本で展覧会を開くための準備を今も続けているとのこと。オリジナルの絵を書き続けておられます。
ギャラリーには区分けが
初めて大芬村を訪れる方にとって、それぞれのギャラリーには違いがないように見えがちですが
どこも同じような絵を売っているわけではありません。
ギャラリーも区分けされています。例えばここ。
ここは「黄江油画艺术广场」という、大芬村の正門入ってすぐのところにある大きな建物。
ここで売られている絵はどれも一流と認められた画家のもので(割と)高価なものが多いです。
物にもよりますが、一枚数千元くらい。ジョブズの肖像画とか写真のような出来の絵が売られていたりします。
体験工房の増加
そして、もう一つの大きな変化は体験工房が増えたこと。
至るところに「油画体验」のボードが置いてあります。
体験工房自体は以前もありましたが、確実に数が増えていますね。
この油画体験、考えてみると非常にいい方法です。
数時間かけて描いた複製画を数十元で売っていくよりも、油画体験でお客さんに(筆の使い方を教えながら)描いてもらい、それを100元以上の値段で売る方が利益があり、お客さんの側から見ても大芬で世界に一枚しかない絵を描くという貴重な体験ができるので喜ばれますね。
普段はオリジナルや複製画を描きつつ、油画体験の場も提供するといったビジネスモデル。理にかなっています。
バイヤーはどこに?
では、絵画のバイヤーはどこに行ったのでしょうか?
もちろん村の中でも絵画を買えますし、そこで取引しているバイヤーもいますが、大半のバイヤーは郊外で取引をしているのだそう。
例えば、このような郊外のビルで行われています。
大芬村の正門に近いところに位置するこのビル。
「茂业书画交易广场(MAO YE ART TRADING PLAZA)」と言いますが、その名の通りこのビル内で絵画のトレードが盛んに行われています。
中をのぞいてみましょう。
所狭しと売り物の絵が飾られています。
観光客は村の中で絵を購入し、業者は郊外のトレーディングビル内で購入…といった流れができつつあると感じますが、特にこのビルで取り扱っている絵画、(一部分ですが)ある特徴があります。
もう一つの特徴
ちょっと見てみましょう。
今回お邪魔したのはTRADING PLAZA内にある「九月装飾画」。
どんな絵が飾られているのでしょうか?
作者は分かりませんが、個人的にこのタッチ好きです。
でもこの絵…何で描いたと思います?
実はこれ、全部プリンターなんです!
プリンター!?
これもそうです。
見分けつきますか?
プリンターだと言われると「あぁ、そうかも」と思うのですが、言われないと分かりません。
もちろん油画のインクの立体感はないので、斜めから見た時の光の反射などはないですが
額に飾って眺めるとなかなか見分けがつきません。
どんなプリンターを使っているのでしょうか?
機種は日本のRoland
このお店の機種は「Roland VersaArt RA-640」。日本メーカーですね。
価格は4万元(約63万円)くらいなのだそう。
オーダー!
せっかくなので、一枚印刷をお願いしてみました!
日本の誇る、葛飾北斎。
手際よくセットアップして…
出てきました!
印刷後、余白を切って終了。
綺麗に印刷されています。
富士山もくっきり描かれています。
色滲みもなし。
ちなみに、印刷する紙(キャンバス)は選ぶことができます。
和紙のような手触りの紙だったり、油絵のキャンバスで使用するのと同じ(ような)紙など、絵によって変更できるとのこと。
中国メーカーのプリンターも
他の店舗には別機種のプリンターもありました。
Locor(乐彩) という中国メーカーの「Deluxejet32S」という機種のようです。本体はかなり大きいです。
訪問時は、その日に印刷する分が終わってしまっていたため
印刷時の様子を見ることはできませんでした。残念。
プリンターは村外に
他にも、当ビルの中ではプリンターを使って看板を印刷する業者も入居しています。
以前、プリンターは大芬村の各店舗内でちらほら見かけましたが、
最近の行政指導により、あまり芸術と関係がないものは村外で行なうことになったのだそうです。
確かに、「油絵でないなら大芬で印刷しなくてもいいじゃん」ってなりますよね。そして実際に福建省など大芬以外でも印刷は行われている模様です。
とはいえ、油絵だけでなくキャンバスや額縁の価格の安さ、また配送の手際の良さなどの環境は整っているので、村外であってもここで印刷するメリットはありそうです。
プリンターの利点
プリンターの絵にも利点があります。
いくつか挙げると
- 品質が安定している
- 割安
- 納期が速い
- 印刷直後に乾くので、配送しやすい
他にもあるかもしれませんが、品質の安定は売る側も買う側もメリットですね。
ただ、油絵の「ムラ」≒「味」 とも言えるので、好みや目的によって変えるのがいいと思います。
ハイブリッドも
プリンター+油絵 というハイブリッド画法も存在します。
プリンターで出力した後に油絵を塗り、立体感を出していきます。
100%油絵よりも速く、プリンターよりも油絵らしく。
でも、最終的にはやはり好み、なのでしょうね。
日本からも買えます!
(前回と)今回の大芬村取材に際しガイドをしてくれたのは、絵画バイヤー菅沢誠士さん。
菅沢さんは大芬村などから絵画を買い、日本に輸出販売しています。
販売サイトはこちら↓
ちょっとサイトを見てみると、こんな感じの絵を売ってる模様。
複数の額を組み合わせてディスプレイするスタイルの絵ですが、めちゃくちゃかっこいい!
現在は、プリンターの絵を扱っているのだそうです。そして、オーダーメイドで希望の絵を指定することもできるとのこと(その場合はサイトの「お問い合わせ」欄からメールしてくださいとのことです)
油絵はクオリティにムラがあるので、一定のクオリティが保てるようになったら油絵も取り扱っていきたいのだそう。
送料等全部込みの価格なので安心ですね。よかったらご利用ください!
大芬村を歩くなら、顔認証ロッカーを使うのが便利!
最後に一点。
大芬村を色々回るとなると(村全体はそんなに大きくないので一周するのは難しくありませんが)
最初に、大芬美術館にある無料の顔認証ロッカーに重い荷物を預けてしまうことをお勧めします。
ロッカーの場所は、一階のエントランス横に位置します。
顔認証ロッカー。鍵もいらないし番号も覚えなくて済むし、ボタン押して顔スキャンするだけで開くし、いいこと尽くし。
活用してみてください!
アクセス・ロケーション
住所:深圳市大芬油画村
最寄駅:地下鉄3号線「大芬」駅A1出口
今回ご紹介した場所の(大体の)位置を記載します。
少し前ですが、大芬村に関する記事は
Diamond Onlineに掲載された高須正和さんの記事がとても分かりやすいです。非常に参考になりました!