今回は、先日ご紹介した 2019年 深圳デザインウィーク(SHENZHEN DESIGN WEEK)の 粤港澳大湾区设计展「设计引擎 DESIGN ENGINE」の中でもひときわ興味深いブースをご紹介します。
そのブースの名前は「Cities Between Cities」。ビッグベイエリア発展のために深センと香港をどのようにつなげることができるのか、独創的なデザインアイデアが展示されています!
目次
粤港澳大湾区设计展「设计引擎 DESIGN ENGINE」
粤港澳大湾区设计展「设计引擎 DESIGN ENGINE」は、「粤港澳大湾区(ビッグベイエリア)」(=広東省・香港・マカオの 珠江デルタ9市 (Guangdong-Hong Kong-Macau Greater Bay Area))の経済発展に、デザインの面でどのように寄与できるか、寄与してきたかを示す展示です。
内容が濃く、見ていて飽きないのでぜひ一度ご覧ください。
展示は、深圳当代艺术馆与城市规划展览馆の一階で5/5まで展示されています。
粤港澳大湾区设计展について、詳しくは前回特集しました以下の記事をご覧ください。
「Cities Between Cities × FCHA」展示内容
今回、私が一番面白いと感じたのが、この展示。
先回の記事で少し触れましたが、もう少し詳しくお伝えします。
簡単に言うと、ビッグベイエリア発展のために深圳と香港をどう接続するか、また現在二分されているゆえに生じている問題にどう対処するかのアイデアが映像と模型の形で紹介されています。
深圳と香港は急速な都市化を進めてきました。このアンバランスな地理や環境の元で多様な文化が生まれてきましたが、2つの交流を促進し、協力と競争のバランスを取りながら街をどのように設計していくことができるか、10人以上のデザイナー達によってアイデアが出されました。
深圳と香港の平均地価は2倍以上の開きがあります。
ボーダーを越える人の数は2013年の時点で毎日5万人以上(2013年ってデータが古いですが…)
中には3時間かけて通勤する人もいるそうです。
その他様々な問題がありますが、当展示は 4つの街を作ることによって、4つの問題を解決するというアイデアです。
具体的には、以下の4つ。
- Living city(居住)
- Learning city(教育)
- Trading city(貿易)
- Caring city(老人ホーム)
一つずつ見てみましょう!
Living city(居住)
ビッグベイエリア発展のためには、交通網の整備が欠かせません。
しかし、現在は深圳と香港が(深圳湾公路はありますが)スムーズにつながっていません。
そこで提案されたアイデアがこれ。
位置的には蛇口港あたりかと思いますが、そこに新たな橋をかける案。
そして、深圳ー香港双方の地下鉄もつなげてしまいます。
橋の中には、8レーンの高速道路・地下鉄・駐車場・公園・商店街・そして居住スペースが!
このような複合施設を作ることで、住居問題を解決し、スムーズな交通の流れを生み出して発展させていくというアイデア。
完全に未来です。これ!
(柱はどこにあるんだろう…)
精巧な模型も展示されています。
Learning city(教育)
これは模型の写真しか撮れなかったのですが、
現在、深圳から香港にたくさんの子供達が通学のためボーダーを利用しています。
親は深圳で働き、子供は毎日通学する子もいれば、香港にアパートを借りて住む子供もいます。
家族がバラバラに住めばそれだけ費用もかかりますし、色々な問題も出てきます。
そこで考案されたのがこの施設。
これは、巨大な教育施設です。
深圳と香港の境にこのような学校を作ることで、双方の子供達がボーダーを越えずに活用できるようになる、というわけです。(位置としては福田区周辺)
Trading city(貿易)
深圳と香港を往来する人の中には、買い物のためにボーダーを越える人たちも多く見受けられます。
香港で売られている(日本の)紙オムツや医薬品・コスメなどを大量に購入しています。
また、逆に華強北の電子街などで電子部品を大量購入するバイヤーも多く見受けられます。
そこで提案されたのが、深圳と香港の接続部分に複合的なトレーディング施設を作ってしまおうというアイデア。
深圳の華強北、OCT Bay、東門、香港のMong Kokなどの商店区域をまとめて施設にしてしまうことで、双方がボーダーを越えることなく十分に買い物ができるという構想。
実現不可能だと思いますが、面白いアイデアですね。
Caring city(老人ホーム)
深圳は平均年齢がとても若い都市ですが、香港は高齢化が進んでいます。
居住問題も合わせて考慮していかなければならない課題の一つです。
そこで出されたアイデアが、このリング状の施設。
これは、高齢者のケア施設とのことです。日本でいう老人ホームですね。
場所は盐田区の下をイメージしているようです。この周りは海と緑に囲まれてとても自然が豊かな場所なので、お年寄りにも優しい環境になりますね。
実現性は?
もちろんこれらはアイデアの域を出ず、一国二制度の現状では法的なハードルなどクリアしなければならない問題が多々あるわけですが、もし本当にこの通り実現したら完全に未来ですよね。
でも展示を見ていると、適当にアイデアを出したという夢物語のレベルではなく、各デザイナーが現状を取り巻く様々な問題を真剣に考えて、それらを解決する現実的な方案を出してきたのがうかがえます。
また、当展示は政府の肝いりで行なわれていること、そして今の中国の経済力を考えると実現可能なものもあるのではないか、とも期待してしまいます。
ぜひ実現に向けて頑張って欲しいですね!
アクセス・ロケーション
場所:深圳当代艺术馆与城市规划展览馆<”深圳两馆”とも呼ばれます>
※入館にあたり、パスポートの提示が求められます。また液体を持ち込むことはできず、大きな荷物はロッカーに預けるように指示されます。開催期間:2019年4月20日ー5月5日 10:00-17:00
最寄駅:(地铁3号线/4号线)「少年宫」駅 A2出口 徒歩約5分
(地铁2号线) 「市民中心」駅 A出口 徒歩約5分
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参考資料: