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今回は、広東省東莞市における「社会保険料追納政策」に関する話題です。告発による社会保険料の追納期間が2年間に短縮されたのだそう。
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目次
東莞市の社会保険料追納政策の変化について
Shenzhen Fanの読者の皆様こんにちは、東莞市在住、深セン市の法律事務所で活動しています日本人法律家、大嶽(オオダケ)です。
中国の製造業においては、社会保険料を満額納付しないことが長年の慣例となっています。つまり、従業員の賃金満額を基数として納付するのではなく、最低賃金や低めの金額を納付基数として社会保険料を納付するということです。そこで、従業員から人力資源及び社会保障部門(以下「社会保険局」といいます)に告発のあった場合の追納リスクという問題が、常に潜在的に存在しています。追納は従業員の入社日からとされるケースも多く、追納金、滞納金が多額になり、企業の存続をも脅かすリスクが存在していました。
しかし、最近、東莞市の社会保険局が、この追納の遡及年数を2年間に短縮したことが、当職らの調査によりわかりましたので、皆様と共有させて頂きます。
一、東莞市社会保険局の社会保険料追納に関する政策の変化
コロナ情勢の東莞市の企業に与える影響が大きかったことから、東莞市は企業の社会保険料の追納について、政策を大きく変更しました。従前は、従業員から告発のあった場合、社会保険料の追納は入社日に遡るとされていましたが、告発のあった時から2年間しか遡らないと変更されました。しかし、この政策変更について、明確な文書は公布されてはいません。しかし、当職らの実務経験と東莞市の各区、各鎮の社会保険局窓口でヒアリングをしたところ、既にこのような政策変更がなされているようです。
2022年9月28日に行われた東莞市日系企業と政府との連絡会において、社会保険局の責任者は、この政策の変更について具体的に次のような説明をしました。
(1)原則として社会保険の追納は2年までとする
(2)使用者と労働者とが協議により合意をした場合は、入社日から追納できる。但し、1998年11月より前に遡って追納することはできない
(3)東莞市人力資源及び社会保障部門及び税務部門は、企業の社会保険の納付状況を能動的には調査しない。労働者から告発のあった場合にのみ、調査を実施する。
二、東莞市の政策変更の法的根拠
東莞市の社会保険局の責任者の口頭での説明によりますと、今回の政策変化の法的根拠は、国務院の公布した《労働保障観察条例》第20条とのことです。
労働保障に関する法令に違反した行為が2年間労働保障行政部門に発見されず、告発もされなかった場合、労働保障行政部門はこれを調査しない。
《労働保障観察条例》第20条
三、広東省のその他の市の規定について
この問題について、広東省においては、深セン市だけが地方性の規定を公布しています。深セン市においては、社会保険料の追納は2年間しか遡及しない、2年を超える追納の告発は受理しないと明確に規定されています(深セン経済特区社会養老保険条例37条)
広州市においては、現在のところ、従業員の入社日から追納が可能としており、2年の制限は存在しません。広州市及び広東省のその他の市においては、この問題について明確な規定はまだなされていません。
四、政策変化の背景
社会保険局や国務院が昨今公布した文書から、政府当局は、企業がこれまで納付漏れ、過少納付としてきた社会保険料について、追納や、滞納金を一括で請求することにより、企業の経営が困難となることを懸念していることがわかります。
当職らの分析によりますと、コロナなどにより中国の景気が全体的に落ち込んでいる中で、社会保険局が積極的に追納や滞納金の支払いを求めるリスクは低くなっています。但し、従業員からの告発があった場合においては、個別に処理されています。
五、おわりに
前述のことから、深セン市及び東莞市においては、社会保険料の追納は最大でも2年しか遡ることはなく、社会保険局が社会保険料の未納、追納分について積極的に企業を取り締まるということはなくなっています。例えば、少数の従業員が、社会保険局で告発を行ったからといって、社会保険局がその企業の全従業員に対して調査を実施するということはないでしょう。あくまで、個別での対応に留まっています。
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講師紹介
大嶽 徳洋 オオダケ トクヒロ
東莞市在住、深セン市の法律事務所勤務
中国法務コンサルタント歴14年
行政書士・東京商工会議所認定ビジネス法務エグゼクティブ
旧HSK11級合格・TOEICベストスコア840点
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