深セン・広東省を中心に活躍されている吾友コンサル(吾友咨询)の隔月News Letterです。
今回は、中国でも広まっているスマホ依存症について、また他国の文化を深く理解することの益について取り上げています。
直近のトピックスでは「住宅取引に関する最新の税制優遇政策」が紹介されています。
目次
情報爆発時代におけるスマホ依存症について
吾友コンサルティング総経理 劉真(Vivian Liu)
情報爆発時代において一番大切なのは何だろうか?時間?お金?恐らく多くの人は、「失われつつある人間の集中力」という私の答えに賛成してくれるだろう。
2020年代に入り、インターネット、ビッグデータ、人工知能などの技術革新により、あらゆる情報のデジタル化が急速に進み、データ量が「爆発的な勢い」で増えている。眠っている間を除き、私たちは常に氾濫する情報に気を取られている。相次いで来るプッシュ通知、ソーシャルメディアでの絶え間ない情報更新、チャットアプリでのリアルタイム通信、ニュースサイトでの様々なイベントの報道……このすべてを搭載するには、スマホ一台だけで済む。いつの間にか、「ながらスマホ」は人間社会の隅々にまで浸透している。食事中にも、道を渡る時にも、風呂やトイレにも、友達と対面で会話する時にも、運転中にも、「賢い」私たちは断片的な時間を十分に利用し、スマホをスワイプして一生懸命情報を得ようとする。
しかし、このようにして、私たちはもっとスマートになったのか?もっと健康的になったのか?もっと幸せになったのか?残念ながら、答えは「ノー」である。
私たちは貴重な集中力を失いつつある
常に手に届くところにスマホがないと不安に感じてしまう。また、情報過多で、短気になる癖も生み出された。このような私たちは、集中的に一冊の本も読めず、一本の映画も観れず、一コマの授業にも耐えられず、家族や友人とゆっくりと話をすることすらできなくなっている。もしいつか集中力が完全に失われたら、人間は深く、批判的に考える能力も失ってしまうのではないか。探求心や向上心も失ってしまうのではないか。
私たちは生存の基盤となる健康を失いつつある
「ながらスマホ」をしている私たちは、きっと次のようなことを経験していたろう。長時間画面を見下ろし続けることにより、首や肩が凝ったり、頚椎が硬直したり、眼精疲労やドライアイになったりする。悲しいことに、スマホ(ネット)にハマっている子供もここ数年急増している。
私たちは心の平穏と安らぎを失いつつある
情報爆発時代において私たちは常に焦燥感に駆られる。重要な事件を見逃してしまうことを恐れたり、ソーシャルメディアの情報洪水により、自分と他人との比較に陥り、既存の生活や成果に不満を感じてしまったり、常に複数のことを同時にやろうとするだけでなく、なんの苦労もせずに、直ちに成果を出そうとする。
いつの間にか、私たちは常にスマホの画面を確認し、操作していないと落ち着かない、いわゆるスマホ依存症にかかってしまっている。タバコ依存症、アルコール依存症や、ギャンブル依存症などと何の違いもないのに、このような全国民的な依存現象に、私たちは妙な安心感が湧き、その弊害を完全に無視しているのだ。
幸いなことに、人間には生まれつきの自省力がある。そこが人間と動物の最大な違いでもある。周岭氏が『認知の覚醒』という作品に述べているように、「成長とは、天性を克服するプロセスである。私達は覚知力と自制心を以て天性を拘束しなければならない。さもなくば、知らないうちに潜在意識に左右されてしまうことになる」。
「スマホ依存症」を意識し始めたのは、私が第一人者でもなく、最後の人間でもない。人間は「情報爆発」や技術革新のメリットとデメリットを弁証法的に見るようになり、スマホ一台にコントロールされないよう、自己制御を意識的に学ぶようになった。ハマっているSNSをアンインストールしている人もいれば、毎日スマホを使う上限時間を決めている人もいる。仕事中にはスマホをあえてバッグに入れておく人もいれば、週末に家族全員で出かける時に、必要以上にスマホを使わないよう、事前に約束しておく人もいる。
「得到」アプリの創業者である羅振宇氏は過去に次のようなことを言っていた。「情報爆発とは単なる仮象である。世の中には本当に良いものは多くない。そして、本当に良いものこそ、絶対に私たちを失望させることはない。」仮に人間が80歳まで生きるとして、この一生で約4000週間しか生きられない。短い人生で、実質的な知識の獲得や理解にあまり役立たない断片的な情報ばかりにこだわるなんて、何の意味があるのか。せっかく今の素晴らしい時代を生きているから、スマホからもっともっと離れて、時間をかけて「本当に良いもの」を鑑賞してみるのはどうだろうか?
<特別寄稿>
岡村 進
株式会社 人財アジア 代表取締役
大手金融機関 顧問
吾友コンサルティングアドバイザー
“真の”ダイバーシティの理解と実践が求められる時代
2013年、外資社長を辞し、渾身の力でEAT(Education for Asian Talents、(株)人財アジア)を設立以来、グローバル時代のマネジメント研修を幅広い層に実施してきた。
根っからの国際派と勘違いされるが、元々は内弁慶な超国内派であった。
27歳の時に、大手生保から米国NYのシティバンク銀行にトレーニーの発令を受けてから、人生が思いがけない方向に転じていった。1988年、初駐在のNYは治安が悪く、毎日一人市内で射殺者がでると言われていた。びくびくしながらホテルを飛び出したものの、おどおど喋る英語は全く通じず、マクドナルドで熱いコーヒーを頼んだのに冷たいコーラを飲むはめになったりした。米国勤務での学びは、「格好つけずに望むことを何度も口に出す勇気」だった。小学生か!と自ら突っ込みをいれたくなるが、日本に戻ってから、実は多くの日本企業人が思いを明かさず呑み込んで生きているなかで、自分らしさにこだわる励みとなった。
90年代前半、二度目の米国勤務時代には、仕事をしながら大学院に通ったので、アメリカの多様性に触れる機会を数多く得た。日本人の飛び込み融資営業に門戸を開く米国大企業の懐の深さに感銘を受けた。大学院のダイバーシティ・セッションでは、「アジア人差別をいかになくすか?」をアジア人の私も交えたグループでオープンに語り合う天真爛漫さに驚いたものだ。卒業旅行の行く先を議論した時に、「日本はもう忘れてよいだろう。中国にいこう。」とみんなが口々に言う切り替えの早さを今も思い出す。
30代の若手には、忖度の少なき米国社会のダイナミズムが心地よく感じられた。ただ、異国での学びを日本に持ち込めば、米国かぶれのレッテルを貼られかねない危惧が当時はあった。環境に応じて使い分ける(ずる)賢さも身についていった。
三度目の米国は、子供たちが現地校に通ったので、さらに深く米国に入り込んだ気がする。小学校から二大政党の良し悪しについて関心を持たせる授業があったり、株式の概念の勉強があったりしたのが衝撃的だった。この教育あってこその米国人なのだと思った。一方で、文化というのは奥が深いもので、良さもあれば課題もある。いまだ多くを語りたくないが、2001年同時多発テロに直面し、米国の明と暗につきひたすら考えさせられた。
海外勤務の思いがけない副産物は、自国文化に対する無知を思い知らされたことだ。米国人の仲間に、歌舞伎だ、忍者だ、画家の〇〇さんだとあれこれ質問されても正確には答えられず、そんな自分を恥ずかしく思って多少は勉強するようになった。
他国を深く知れば知るほど、良さも課題も見えてくる。翻って、母国に関する知識・知見の不足を認識し、その良さや課題を比較感を持って考えるようになった。
国と国を比較するときに、点と点ではなく、面と面で立体的に理解する重要性を認識できたことが、海外勤務で楽しみ、苦しんだことの最大の収穫であった。どちらかが是でどちらかが非という短絡的発想では、世界情勢の見方を誤るし、品格のある友人を遠ざけてしまうことにもなりもったいない。
その後スイス系のグローバル金融機関に移り日本の代表になった。日米比較で身につけた立体的思考が、大陸欧州の文化を理解する助けとなった。
いま広く世界を見渡すと、単純に相手を決めつけ憎しみあう二項対立の罠に陥りつつあると感じる。国も企業も、蛇行しながら最後は構成員の意思が反映されるものだから、これからは個々人の生きざまがとても大事になってくるのではないか。難しい時期だからこそ、海外で暮らしたり、グローバルビジネスに向き合ったりしている人財が、流れに身を任せず、それぞれの理念や信念に基づき行動することが最大のリスク管理になるはずだ。吾友コンサルティング代表のビビアンとは、日本で活躍する中国人の友人を介して知り合った。日本のことも母国のことも立体的に見つめる視点と優しいまなざしを信頼し、ともに励まし合う仲間だ。
直近のトピックス
中国では、不動産市場の安定的かつ健全な発展を促進するために、財政部、税務総局、住宅都市農村建設部は、2024年11月に次のような税制優遇政策を発表した。
1. 住宅取引における契税に関する政策について
個人が家族の唯一または2軒目の住宅を購入する場合、住宅面積が140平方メートル以下であれば契税の税率は1%に軽減され、140平方メートル以上であれば、唯一の場合は1.5%、2軒目の場合は2%に軽減される。
2. 土地増値税および増値税に関する政策について
(1)普通住宅・非普通住宅基準が廃止された都市においては、納税者が普通基準の住宅を建設して販売し、付加価値額が控除対象額の20%を超えない場合、土地増値税を引き続き免除する。
(2)普通住宅・非普通住宅基準が廃止された北京市、上海市、広州市、深圳市において、全国の他の地域と同様に、個人が2年以上(2年を含む)保有した住宅を対外販売する場合、増値税を免除する。
吾友コンサルティングについて
吾友コンサルティングは中国で活躍する日本企業を対象に税務・財務・ビジネスのコンサルティングサービスを提供している会社です。みなさんの日々の課題や悩みをしっかり伺い、町医者のように親身になって的確なアドバイスを行っています。
当社の起業理念は、中国で活動する海外企業を中心にビジネスの成長を応援することです。日頃コンサルティングを通じて、多くのお客様がビジネスの小さな成功に止まらず、中国という国に向き合い、その特性などを深く理解した上でタイトに繋がろうとする姿勢を感じています。深い理解あればこそ、より大きな成功に結び付いていると思います。
皆さまへの更なる応援のために、当社総経理、Vivian Liuが業務を通じて感じたり、考えたことを記し、発信させていただくことにしました。当面、隔月です。
テーマに関し、文化・社会的な内容に加えて、適宜ビジネスの成功や失敗からの学びなど実践的な内容もカバーしていくつもりです。
また、当社と提携している会社、当社のお客様または知り合いなどにも寄稿をいただいております。
ぜひよろしくお願いいたします。
Vivian Liu 連絡先: