
世界中に拠点を置く総合法律事務所で、深圳市にジャパンデスクを設置した「大成律師事務所」(DENTONS)からリーガルニュースをお届けします。
今回は、日系企業にありがちな、書面で労働契約書を取り交わすことを失念してしまった場合の対処について、中国労働訴訟判例を紹介しながら説明します。
事例
中国では、日本と異なり、必ず書面で労働契約を締結しなければならないとされております。そして、この規定に違反した場合、使用者には、雇用関係が生じた後1箇月以降、2倍の賃金支払義務が生じます。
しかし、日系企業の実務におきましては、労働契約の更新時などに、どうしても書面で労働契約書を取り交わすことを失念してしまうことが多々あります。そういったとき、対象者との契約を、法定の期限以前にまでバックデートして更新すれば、2倍の賃金支払義務を免れることができないか?ということが問題になります。
これについて、判例をサーチしましたので、今回のリーガルニュースでは、この判例について皆様と共有させて頂きます。
参照判例
労使双方が最後に締結した労働契約の締結日は2022年1月7日となっている。しかし、WeChatのチャットの履歴や写真などの証拠を総合的に考慮すると、遅くとも2022年6月21日になってから労働契約を締結したと認められる。そのため、最後に締結された労働契約の署名日と実際の締結日は一致せず、バックデートして契約を締結したという状況が存在することがわかる。したがって、会社は2022年3月1日から2022年6月20日までの期間について、2倍の賃金支払義務がある。本来であれば、労働契約が期間満了となった後、速やかに再契約をすべきであり、5か月後に日付を遡及して(バックデートして)契約を締結すべきではない。
よって、この行為によっても(日付を契約満了日までバックデートして更新しても)、使用者が労働契約の満了後1か月以内に労働者と書面による労働契約を締結しなければならないという法的義務は免除されない。
(参考判例)
- 上海市第一中級人民法院(2023)沪01民终8913号
- 上海市松江区人民法院(2023)沪0117民初3338号
当職の見解
前述の判例から、裁判所は日付をバックデートして再契約をしたとしても、実際に書面の労働契約書を締結した日付が、法定の期限を過ぎているのであれば、使用者は2倍の賃金支払義務を免れないと判示しています。
しかしながら当職としては、いくつかの理由から日付をバックデートして労働契約書を締結した方がよいと考えております。その際、対象者とのコミュニケーションにおきましては、メールやWechatなどではなく、口頭ですることが望ましいです。この点につきまして具体的な詳細情報をご希望の方は以下のお問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
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