2020年6月21日、中国の次世代リニアモーターカーとして開発されている実験線が時速600kmの速度実験に成功したと発表されました。
このリニア、広州ー深センー香港をつなぐ新しい高速鉄道路線として採用されることが検討されています。実現した場合は広州ー深センまでの移動時間が20分以内に収まるとのこと!
Source:
Shenzhen Daily: Maglev trains may run on new GZ-SZ hi-speed rail 国产磁悬浮样车试跑成功
深圳晚报:广深间或建高速磁悬浮城铁 速度可达每小时600公里
房BOSS:600公里/时!广深港高速磁浮来了!4种方案曝光!
澎湃新闻:中国磁浮加速推进:广东、深圳、海南、湖南等地预建磁浮项目
目次
開発会社は青島の「中国中車青島四方機車」
2020年6月21日、中车青岛四方机车车辆股份有限公司/中国中車青島四方機車(China Railway Rolling Stock Crop. Qingdao Sifang Co.,)の開発したプロトタイプのリニアモーターカー"高速磁浮试验样车"が上海同济大学で正常にテストされたとのこと。
時速600kmのスピードを出すことができるこのリニアモーターカーは、30以上の企業、大学、科学研究機関と協力して開発されており、科学技術省の国家重点研究開発計画の重要な位置づけとなっています。
このプロジェクトは2016年7月に開始され、約4年間の科学・技術的研究の後テスト車両の開発に成功、さまざまな動的・静的テストが行われています。担当エンジニアによると、車体は設計要件を満たしておりテストは順調とのこと。
5台のプロトタイプが開発中
現在、5台のプロジェクト試作車の開発が着実に進んでいます。計画によるとこれらのプロトタイプシステムは2020年末までに公開される予定です。
高速リニアモーターカーは、2019年の「強力な輸送国建設概要」《交通强国建设纲要》の中にも含まれており、中国の高速輸送を補完する重要な要素となっています。
広州ー深センー香港を結ぶリニア計画
現在、広州ー深センー香港の区間をこのリニアモーターカーでつないでしまう計画が進行中です。
その名称は「广深港建高速磁浮铁路」。2019年6月14日に北京で行われた世界交通会議(世界交通运输大会)で議論されました。
以下の4つのルートが検討されています。
1)広州白雲空港(白云机场)ー広州駅(广州火车站)ー南沙ー宝安空港ー前海ー香港西九龍
2)広州白雲空港(白云机场)ー珠江新城ー南沙ー宝安空港ー前海ー香港西九龍
3)広州白雲空港(白云机场)ー天河公园ー宝安空港ー前海ー香港西九龍
4)広州白雲空港(白云机场)ー天河公园ー東莞市区ー福田ー香港西九龍
広州ー深センー香港の高速鉄道といえば、すでに香港西九龍を起点とする「広深港高速鉄路」が運行中ですし、広州から深圳宝安空港までを結ぶ「穗莞深城际铁路」も2019年12月に開通したばかりですので、このリニア計画の路線は重複が目立ちます。
最も現実的なのはルート2
最も現実的なのは前海自由貿易区と深圳宝安空港、そして広州市の重要なエリアとなる南沙自由貿易区を通る2番目のルートなのだそう。
次に可能性が高いのは最短距離の3番目とのことですが、南沙エリアを通らないためリニアの利点が低くなってしまいます。
東莞市を通る4番目の計画については広深港高速鉄路とほぼ重複するため採用される可能性は低いと推定されます。
広州ー深セン間を20分で!
長さ150 kmのこの路線、深圳宝安国際空港と広州白雲国際空港間を20分以内で行けるようになる予定です。
速いだけでなく、車輪とレールの摩擦がないため騒音が少ないメリットづくしのリニアモーターカー。線路を地下に通す案もあるそうです。
「最先端の実験」
とはいえ、確かに4番目以外のルートも既に開通している高速鉄道と似ているのは確かなので本当に需要があるのか?と思ってしまいますが、深圳晚报によると現在運行されている2つの高速鉄道では広州ー深セン間のニーズを満たすことは困難で飽和状態に近づいており、増加する乗客需要に対応できないのだそう。
他にも房BOSSの記事内では「最先端の実験」といった表現が使われています。「まずはやってみる」という中国らしい進め方なのかもしれません。
現在、計画は予備調査中であり、入札は磁気浮上技術の現在の状況や、乗客の流れ・経路設計・投資見積もり・運用コストなどの研究を経て行われるようです。
日本のリニアは…?
そういえば、日本のリニア計画はどうなっていたのでしょうか?
「リニア中央新幹線」とも呼ばれますが、Wikipediaによると最高設計速度は505 km/h。東京(品川)ー名古屋駅間を最速で40分で結ぶ待望の路線です。
2027年運行開始予定
いつ運行されるのかというと、東京(品川)ー名古屋間が2027年に運行開始、名古屋ー新大阪駅間が2037年運行開始の予定とのこと。
開発が始まったのは1972年…国鉄の時ですね。山梨リニア実験線では1996年から試験が行われていましたが、試験開始から30年後に運行開始という流れになりそうです。
うーん、これは下手すると中国の新型リニアの方が先に開通してしまう可能性ありますね。速度も遥かに上回るし…
中国は工事に着手すると早い
最高商業運転速度431km/hで世界最高速度を記録したMaglevとも呼ばれる上海の現行リニア「上海磁浮示范运营线」は2001年3月に建設開始、わずか3年弱(2004年1月)で商業運行を開始しました。走行距離が短いから早く建設できたとも言えますが、それでも中国のスピードには驚かされます。
今回の試運転成功を皮切りに、上海・北京等中国の各都市や内陸までリニアで張り巡らされていくといいですね。
高速で環境にやさしくメンテナンスコストも低いと言われる新型リニア。都市間を結ぶ高速リニアの実現は意外に早いかもしれません。