一帯一路政策の一環で話題となった、中国とラオスを結ぶ初の国際列車「ラオス中国鉄道」(中老鉄路)。
当鉄道は、実は深センも大きく関係しており、「湾区号」中老国際班列という深センとラオスを結ぶ列車がラオス中国鉄道の開通と同時に運行を開始。大湾区で作られた越境EC商品を東南アジアに届けます。
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「ラオス中国鉄道」
ラオス中国鉄道「ラオス中国鉄道」("中老鉄路"/"中老国际班列"とも呼ばれる)は、中国とラオスの国境ボーテン(磨丁)からラオスを縦断し、ラオスの首都ヴィエンチャン(万象)までを結ぶ初の国際列車で、中国の東南アジアにおける一帯一路構想の重要なステップとなります。
12月3日、中老鉄路の第一号である「复兴号」と「澜沧号」が、昆明駅とヴィエンチャン駅を同時に出発しました。
全面的に中国規格を採用したラオス中国鉄道ですが、中国の構想ではラオスとの接続後以下の地図のようにさらに南下してゆき、タイを縦断予定。その後マレーシアに入り、最終地点はシンガポールとなります。
「中亜班列」とも呼ばれる、中国の昆明を軸として展開される東南アジアの巨大インフラ計画が実現すると、中国にとっても周辺国にとっても貿易に弾みがつく一方で、巨額のインフラ投資分を回収できるのかという懸念もあります。
深センとラオスを結ぶ初の国際列車「湾区号」も出発
この中老国际班列、実は深センも重要な役割を担っています。
12月3日午後5時頃、「湾区号」と呼ばれるコンテナ列車が輸出品のコンテナ35個を積み、国家的な物流拠点である深センの平湖南駅を出発しました。
当列車はまず深センから雲南省昆明に向かいます。その後新たに開通したラオス中国鉄道の路線を用いて中国とラオスの国境である「磨憨」(モーハン)口岸を通過、4日後にはラオスのビエンチャン(万象)に到着する予定です。
越境EC商品を東南アジアに運ぶ「湾区号」中老国際班列
当列車は、中国で初めてのラオス行き国際列車の一つであると共に、深センからラオスへ向かう最初の国際列車でもあるため盛大なオープニングセレモニーも催されました。
今回の列車の貨物額は732万元で、照明器具、電気炊飯器、電気ケトルなどの電気製品や、大湾区で組み立てられた軽工業の越境EC商品が主な貨物であると言われています。
将来的には、大湾区の企業の商品は、ラオスのビエンチャンを経由して、マレーシアやタイに直接届くようになるとのこと。
当列車は、深セン市交通局、深セン税関、中国招商集団、広州鉄道集団などが共同で建設した新しいインフラで、これにより「一帯一路」沿線の国々との連結を実現することができると期待されています。
深センとヨーロッパを結ぶ「湾区号」中欧班列は年間100本以上が運行中
深センが中国の一帯一路政策において重要な役割を担っているのは有名な話。2020年には深センとヨーロッパを結ぶ「湾区号」中欧班列がスタートしました。この列車は、深センからカザフスタン、ロシア、ベラルーシ、ポーランドなどを経由して、ドイツのデュイスブルクに到着する総走行距離13,438kmの路線のほか、深センーブタペスト(ハンガリー)、深センーBorsino(ロシア)線も運行中。
統計によると「湾区号」中欧班列は、2021年の1~11月に112本の列車を走らせ、5,371両の客車、7万3,000トンの貨物、総金額は28億7,000万元にも上るのだそう。大湾区にある企業がヨーロッパやシルクロード経済ベルト沿いの国々とつながるための効率的な国際物流を構築しています。
安定した物流の構築へ大きな期待
2021年1~10月の深センの「一帯一路」沿線国との輸出入は前年同期比12.9%増の6,061億元。特にASEAN向け輸出入は4,162億元で安定した成長を続けています。中でもベトナム、マレーシア、タイはトップ3の貿易相手国です。
これまでラオスやタイに商品を送る場合は、それぞれ陸送と海運を選択していましたが、この2つの輸送手段が通る港や埠頭は現在混雑しているため、今回の列車の運行により選択肢が増えて物流の問題解消が期待されます。
深センで生産された電子商取引商品は、東南アジアやラオスに強い市場を持っており、これらの地域の強い需要に応えることができると同時に、内陸国ラオスの地場産品である農産物を当鉄道を利用して大湾区にも輸送できるようになります。昨今は中国で野菜の高騰が話題になりましたが、価格の安定にも一役買うかもしれません。
RCEP協定の締結とラオス中国鉄道の開通により、深センはヨーロッパとASEANを結ぶ国際交通ハブ都市としての役割をさらに果たすことが期待されています。
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