(写真:「一签多行」政策施行初日の12月1日に香港尖沙咀を訪れる観光客 via 直新闻)
12月1日より、深圳市の居留許可証保持者は香港への無制限訪問が可能となる「一签多行」政策が復活しました。
香港入出境管理局は施行初日に10万9千人の訪問者が本土から訪れ、飲食業の売上高も前週末比10%増加したと発表。香港では今後のホリデーシーズンに向けてさらなる観光客増加を期待しています。
目次
12月1日に施行された「一签多行」政策
中華人民共和国出入境管理局は2024年11月29日、深圳市在住の居留許可証保持者(深圳市戸籍居民/居住証持有人)に対して、12月1日より香港への複数回入境許可証の申請が可能となる「一签多行」政策を施行する、と発表しました。これにより1年間の香港への無制限の訪問が可能となります。一度の滞在期間は最長7日間です。
加えて、珠海市に在住登録している住民は、2025年1月1日よりマカオへの週1回の訪問が可能となる「一周一行」政策が施行されます。これにより1年間のマカオへの一週間に一度の訪問が可能となります。一度の滞在期間は最長7日間です。
この「一签多行」政策は以前に施行されていたものの、香港を訪れる中国本土住民の数が増加するにつれ香港の観光のキャパシティなどに問題が生じたため、「一周一行」政策(深圳戸籍居民は一週間に一度のみ香港を訪れることが可能)が2015年4月13日に施行されました。これにより、深圳戸籍居民は1年間に52回だけ香港に入境可能となり、頻繁に香港を訪れることはできなくなりました。
初日は10万人超が香港を訪問、飲食店の売上高も前週末比10%増加
香港入出境管理局は、「一签多行」政策施行初日となる12月1日に10万9千人の本土からの訪問者が香港に到着し、過去5年間の日曜日で最高数を記録。また前週の日曜日と比べ17%、11月最初の週の日曜日と比べ37.4%増加。香港の飲食業の売上高は前週末と比べ10%増加した、と発表しました。
クリスマスや新年のピークシーズンを控える香港では現在、交通機関、決済プラットフォーム、免税店、ショッピングモールなどさまざまな業態が、深センからの訪問者向けに、越境交通、飲食、消費に関する割引サービスを次々と提供しています。
香港行政府観光局は、深センからの訪問者を香港に呼び込み、旅行や消費をしてもらうための宣伝活動を強化中。今月の飲食業界の取引量は、前年および一昨年の同時期と比較して20%増加する可能性があると予測されています。
川を隔てて深センと隣接する上水區の新康街、龍琛路、新發街といったエリアでは、薬局やドラッグストアが多かったことから「藥房街」として知られていました。現在は多くの店が衣料品店、ベーカリー、屋台、レストランなどに業態を転換しているものの、営業を続けているドラッグストアは、今回の政策施行により来年の売り上げが50%増加するだろうと楽観的な見通しを立てています。
パンデミック後、中国本土の住民は越境EC、購入代行、チェーン加盟店舗などを通じて海外製品を直接購入できるようになったものの、それでも香港の店舗で薬用オイルや軟膏、健康製品などを直接購入できることに魅力を感じる人は少なくないようです。尖沙咀の廣東道(カントン・ロード)では現在もたくさんの中国本土からの観光客がブランド店の入り口で行列を作っており、ホリデーシーズンの収益増加に期待が寄せられています。
免税限度額の引き上げも期待
しかし課題もあります。今年8月より、香港およびマカオから入境する本土からの旅行者の免税限度額は合計8,000元から15,000元に引き上げられました。しかしこの額では香港への訪問回数が増えても高額商品を購入するとすぐ限度額に達してしまうため、免税枠をもっと拡大しないと観光客の消費額を引き上げることはできません。
香港ドルの為替レートは強くなりましたが、人民元との為替レートの差は依然としてあり、香港で高級品を購入する本土住民の話によると、高級品は本土で買うよりも2,000~3,000元安くてお手頃だと感じているのだそう。免税枠を引き上げることの効果は大きそうです。
並行輸入業者(水貨客)問題は?
深圳と香港の往来が活発化すると、出てくるのは並行輸入業者(水貨客)の問題です。水貨客というのは、商品を税関や入境審査で申告せずに中国本土に持ち込む業者のことを指し、香港に日用品、特に粉ミルクを買いに行く人々によって香港で供給不足となり、価格が上昇するという問題が起きていました。
しかし現在は消費パターンが変化し、また中国本土市場の豊富な商品供給により消費者はオンラインでの商品購入にシフトしているため、全体的には並行輸入業者が再び現れることはないと考えられています。
「一签多行」申請は出入境管理スマートサービス端末から可能
申請は、地元の出入境管理机构人工窗口にて行うことができるとのこと。このスマートサービス端末のビザ申請手続きは、以前の「一周一行」申請と似ており、画面の指示に従って操作するだけで2分ほどで完了します。申請は「3ヶ月間有効」、「1年間有効」、「1年以内の複数回入境有効」の3つのオプションがあり、3ヶ月有効の手数料は15元なので、渡航期間の短い住民は3ヶ月を選ぶこともできます。「1年以内の複数回入境有効」の手数料は80元です。
日本人は外国人のため自由に香港訪問を行うことができますが、これからは深圳の地元の友人とも一緒に香港観光を楽しむことができそうです。
Source:
国家移民管理局:中华人民共和国出入境管理局关于在广东省深圳市、珠海市和横琴粤澳深度合作区实施赴香港、澳门旅游“一签多行”“一周一行”政策的公告
Xinhua ShenzhenDaily:China expands multi-entry permits for HK, Macao赴港澳实施“一签多行”“一周一行”