12月28日、深セン地下鉄5路線が一斉に開通しました。
特に注目されていたのが、深圳湾口岸に直接つながる地下鉄13号線<南段>です。
当路線開通により香港との距離が一層近くなり、南山区のハイテクエリアや深圳大学周辺の混雑緩和が期待されています。
地下鉄5路線一斉開通
深圳地下鉄開通20周年を迎えた2024年12月28日、以下の5路線が新たに同時開通しました。
地下鉄3号線<四期>「双龙」—「坪地六联」
地下鉄7号線<二期>「西丽湖」—「深大丽湖」
地下鉄11号線<二期>「岗厦北」—「华强南」
地下鉄12号線<二期>「海上田园东」—「松岗」
地下鉄13号線<南段>「深圳湾口岸」—「高新中」
予定から2年の遅れが生じた地下鉄13号線
地下鉄13号線は「石岩线」とも呼ばれ、南は香港、北は東莞をつなぐ南北に伸びる路線です。深圳湾口岸から北に向かう途上で南山区、宝安区、光明区を通ります。第一期となる<南段>は、「深圳湾口岸」駅から「高新中」駅までの7駅で、全長は約6.36キロメートル、途中で1号線、2号線、9号線、11号線に乗り換えることができます。運行時間は午前6時30分から午後11時まで、片道所要時間は約12分です。
当初の建設期間は2018年1月から2022年12月までと計画されていましたが、全体の工期は2年遅れてしまいました。原因は、地下鉄13号線と併せて建設中の西丽枢纽高铁新城(西麗総合交通ハブ)と関連する地下空間の建設により当初予定から開通がずれ込んでいるとのこと。
7駅が開通
今回先行して開通した13号線<南段>の駅は以下の7駅です。
- 深圳湾口岸
- 人才公园
- 后海(2/11号線 乗換)
- 科苑(2号線 乗換)
- 粤海门(9号線 乗換)
- 深大(1号線 乗換)
- 高新中
「后海」駅は地下鉄2号線・11号線、「科苑」駅は2号線、「粤海门」駅は9号線、「深大」駅は1号線との乗換が可能です。
深圳湾口岸駅C出口を降りて徒歩100メートルほどの距離に深圳湾口岸旅检大楼(旅客検査ビル)があり、香港への接続が容易になりました。これにより香港の屯門や元朗へ、そして香港空港へのアクセスが楽になります。
運営会社は4号線と同じ「MTR港鉄」
地下鉄13号線は、(福田口岸と牛湖を結ぶ)地下鉄4号線と同様に「MTR港鉄」として知られる港铁轨道交通(深圳)有限公司が運営会社となっています。
360百科によると、2020年8月5日、MTR港鉄は深圳地下鉄13号線の30年間の運営権を授与されることが確定しました。
港铁技术咨询(深圳)有限公司(港铁咨询)と中铁电气化局集团有限公司(中铁电气化局)はコンソーシアムを組んで、深圳地下鉄13号線の官民パートナーシップ(PPP)プロジェクトの入札を勝ち取りました。その後2社は合弁会社を設立し、30年間に渡ってプロジェクトへの投資、建設、運営を行います。
深圳大学・科兴科学园の混雑緩和を期待
13号線<南段>はそこまで長くありませんが、朝夕絶えず混雑に悩まされていた深圳大学や科兴科学园周辺エリアにとっては特に待望の路線開通となります。
朝夕のラッシュ時、科苑路や深大(深圳大学)駅は混雑しており、地下鉄駅とオフィス圏内のエリアも人で溢れているのだそう。2号線「科苑」、9号線「粤海门」、1号線「深大」は東西に走っていますが、これらの駅を南北に繋ぐ路線は今までありませんでした。特に深大駅はいつも混雑しており、ラッシュ時に駅を出るだけで10分もかかるため、周辺の出稼ぎ労働者は通勤に長年苦しめられてきました。
人口密度が高く、周辺の道路は狭く、公共交通機関のキャパシティも限られている科学园には、14棟のオフィスビルがあり、そこには400社以上の企業が入居しています。実に4万人以上の労働者が働いているこのエリアにおいて、南北を走る主要幹線の誕生は多くの人々の生活を向上させるものとなりそうです。
デザインテーマは「阳光+共享」
13号線は「陽光+共有」をデザインテーマとし、テクノロジーと文化を表現しています。 機能性があり、環境にやさしいという設計原則に従い、温かみがあり快適で活気のある地下鉄空間が作り出されています。
車両は鮮やかなオレンジ色が基調となり、8両編成のA型軽量アルミ合金車体で、最高営業速度は100km/h、1編成あたりの定員は約2,200人となります。中空の側面窓は従来よりも厚くなり、防音・断熱綿などを採用し、車両の遮音・防音性能が向上。空気浄化装置も搭載し、湿度制御も可能です。車両内の照明設備は自動光感応機能が搭載されています。地下鉄の騒音軽減は嬉しいですね。
13号線はGoA4完全自動列車運行制御システムを採用した、完全自動運転の路線です。列車制御室にはスマートステーションシステムのインターフェースとなる大型の高解像度デジタルディスプレイ画面を設置。スタッフは画面からワンクリックで駅を切り替えて各駅のシステム機器を制御します。駅の各種設備の稼働状況や、温度、湿度、空気質などの情報も、スクリーンにリアルタイムで表示でき、トラブル発生時はシステムによって早期警報が発せられ、大型スクリーンに故障箇所に対応するCCTV監視ビデオがリアルタイムで表示されるのだそう。
13号線の各駅には「インテリジェントカスタマーサービスセンター」が設置され、インテリジェント発券端末、セルフサービス発券機を設置。乗客はチャージ、チケット購入、請求書発行などを処理することができます。この機器はインテリジェントAIによる問い合わせや遠隔カスタマーサービスに対応しています。また、駅の入退場に顔認証や手のひら静脈認証もサポートしています。
13号線第二期(北延)は2025年内開通予定
今回開通した13号線は、今後さらに北に延伸します。現在工事中の光明区と南山区をつなぐ「高新中ー上屋」区間の13号線第二期(北延)は2025年内開通予定です。
光明区は国家戦略を担う光明科学城を中心として世界クラスの科学都市になるべく技術競争に力を入れています。北に延伸する当路線により、光明区から南山区中心部まで30分、深圳湾口岸まで45分で到着することになり、産業チェーンの技術人材の配置に変化が起きると期待されています。
国家戦略を家賃の安い光明区に居住し、南山区や香港に通勤している方にとって待望の路線となりますね。また、大湾区で推進中の「一小时交通圈」(一時間交通圏)の実現にも一歩近づきます。
13号線第二期(南延)も建設進行中、2025年内開通予定
さらに、第二期(南延)も建設中です。こちらは深圳湾口岸から南に伸び、深圳湾沿いの「歌剧院」(オペラハウス)や、蛇口エリアの2号線「東角頭」駅と接続します。こちらも2025年年内開通に向けて準備中です。ペニンシュラなど蛇口エリアにお住まいの方々にとってこの路線を待ち侘びている方は多そうです。
13号線沿線では香港居民向けのプロモーションを展開中
香港の地元紙によると、多くの香港居民が13号線開通に合わせて深圳湾口岸で長い行列を作り、始発列車に乗り込んだのだそう。深圳で買い物を楽しむ香港在住者は増えているものの、これまで深圳湾口岸からショッピングエリアに行くにはタクシーを利用するために行列に並ぶ必要がありました。深圳のビジネス街や深圳湾万象城といったモールに直結する当路線により、(すでに地下鉄路線が整備されている福田区と同様)南山区を訪れる香港居民が増加すると思われます。
香港居民の北上消費ブームを捉えるため、地下鉄13号線沿線では香港居民向けのプロモーション活動を次々と展開中。レストランも相次いで新店舗をオープンしています。南山蛇口花園城商場のモールでは、多くの店舗が香港観光客向けの特別サービスを用意しており、新たなブランドを導入しています。すでに福田口岸近くに店舗を構える広東料理レストラン「木棉中餐廳」は新店舗を12月30日に海岸城にオープンし、各種クーポンを発行するなどしてプロモーションを展開中です。
深圳の病院に通院している香港居民にとっても待望の路線となりました。以前は香港から深圳に渡った後、香港大学深圳病院まで行くにはタクシーを利用する必要がありましたが、13号線開通により乗り換えなしで直接病院に行くことができるようになりました。他の深圳市内の病院で健康診断や診察を受ける香港居民にとってもアクセスが格段に良くなります。
香港側も13号線開通により集客を期待しています。香港シティバスは両都市間の交通をよりスムーズにするため、約5年間運休していたB3M路線を(地下鉄開通日となる)12月28日より再開すると発表しました。
B3M路線については過去記事を参考にどうぞ
13号線開通により深圳ー香港両面の経済・人流の流れが一段と活発化しそうですが、香港は当路線にとどまらず、前海エリアと香港をつなぐ越境鉄道「港深西部鉄路」を巨大新都市建設計画に一部に組み込んでいます。こちらも目が離せませんね。当プロジェクトの続報は公開され次第お伝えします。
Source:
湾区书院:官宣!深圳地铁13号线南段月底开通运营!地铁13号线二期(北延)计划2025年开通运营!
聚家好房:深圳地铁一览表(已开通 规划中 远期规划)建议收藏