
深セン市は2月16日、中国発AI「DeepSeek-R1」を利用したアプリケーションサービスを市内すべての政府機関に完全対応させました。
これにより、深セン市は市内全域でDeepSeekを展開する広東省で最初の都市となりました。DeepSeek-R1モデルを政府のクラウドと統合することで、住民へのコンサルティングを24時間365日提供できるようになります。福田区では70名の「AIデジタル職員」を立ち上げ、住民へのサービス向上を計ります。
目次
深圳市は広東省で初めてDeepSeek完全対応

中国のAI企業DeepSeek(杭州深度求索人工智能基础技术研究有限公司)が1月20日に発表したDeepSeek-R1モデルは、大規模な強化学習によって開発された第一世代の推論モデルです。数学、コーディング、言語処理など、さまざまな領域にわたる複雑な推論を行うことができます。
2月10日、深圳市政务服务和数据管理局(深圳市政府サービス・データ管理局)は、政府のクラウド上でDeepSeek-R1(671B)フルモデルの展開を完了し、2月13日には利用と操作に関する全市的なトレーニングを組織しました。
また、政府のクラウド環境にファーウェイの华为昇腾智算专区(Ascendインテリジェントコンピューティング専用ゾーン)を構築し、総合的なAIサポートプラットフォームの構築を推進しました。これは政府職員向けのインテリジェントな質問応答サービスと、開発者向けの業界向けアプリケーションサービスとなります。
このモデルの展開は、ピーク時のデータ処理、機能性、セキュリティなどのストレステストを行い、高負荷の運用条件下での安定性と信頼性も確保されていることが報告されています。また、特区のリソースに基づき、必要に応じてその後の拡張を行うことも可能です。さらに、7×24時間の専門の運用・保守チームと運用サービスシステムを備えており、各政府部門に専門的かつ効率的なサービス対応を提供しています。
これにより深圳市は広東省で初めて政府のクラウド環境において全市的な規模でDeepSeekを展開し、深圳市のスマート政府サービスが新たなレベルに上がります。
深圳市は約50のAI応用シナリオを発表

現在までに、深圳市は公共部門で約50のAI応用シナリオを発表しています。その中でも、深圳市中級人民法院は、裁判所の人員に比して事件数が多いという問題に対処するため、国内初の「AI支援裁判システム」を構築しました。これにより、司法裁判の効率と質を大幅に向上させたと報じられています。
DeepSeek-R1モデルを政府のクラウドと統合することで、自然言語処理機能を通じて24時間365日のコンサルティングを住民に提供することが可能になり、サービスが大幅に強化されます。また、DeepSeekがデータ分析と意思決定をサポートすることで、大量の政府データを効率的に処理するといった改善も行われます。
深圳環水集団:住民のほとんどの水問題を解決

深圳环水集团(環水集団)情報センターのオフィスでは、2月13日から正式にDeepSeek R1モデルにアクセスしました。これにより、公式文書や資料の作成、緊急計画の作成、グループの規則や規定の照会に使用することができ、知識の統合を迅速に実行することができる、と担当のITエンジニアの苏洋氏は語っています。
また、環水集団は水業界の伝統的なサービスモデルを打破し、「千家万户水管家」(数千世帯の「水執事」)サービスモデルを革新し、「水執事」(水道の使用量を調査し、アドバイスを行う専門家)とユーザーのコミュニケーションを向上させ、前回の相談内容とユーザーのニーズとの不一致を解決します。
そして、「用户画像」(戸別画像)と「小区画像」(地区コミュニティ画像)のライブラリを結合し自然言語理解と生成能力を利用することで、住民のほとんどの水問題を解決し、応答速度とサービス品質を向上させることができるようになります。
深圳海事局:意思決定サポート・違法行為検出率向上

深圳海事局では、海事部門がDeepSeekの海事専門ネットワークへの接続を完了しました。 AIアルゴリズムを利用することで、船舶航行データの補助分析、潜在的なリスクの予測、海事関係者へのインテリジェントな意思決定サポートを実現します。加えて、危険物コンテナ配分の分別における違法行為識別の検出率向上など、AIによるいくつかの応用に重点を置いています。
福田区:70名の「AIデジタル職員」を立ち上げ

福田区は2024年から技術チームを組織し、街やコミュニティに深く入り込んで各機能部門の業務における問題点を整理し、240の行政サービスシナリオを整理した上で、DeepSeekをベースに開発された70名の「AI数智员工」(AIデジタル職員)を立ち上げました。これにより行政サービスの飛躍的な効率向上を促進します。この70名のAIデジタル職員は11種類あるようで、公文書処理、生活サービス、緊急管理、投資促進など、複数のシナリオにおける政府サービスをカバーできるようです。
AIの管理において、福田区は《福田区政务辅助智能机器人会员管理暂行办法》(福田区補助インテリジェントロボットメンバー管理暫定措置)を公布したと伝えられており、AI技術が政府の管理とサービスを強化し、基層部の負担を軽減することを可能にしています。
竜崗区:政府提供のサービスアプリにDeepSeekが完全対応

竜崗区は、DeepSeek-R1(671B)モデルをローカライズ展開し、政府のネットワーク上で稼働を開始しました。ローカライズされることで政府のデータがドメインから離れないため、データを大胆に提供して分析させ、業務効率を向上させることができます。これまで竜崗区は国内の大型モデルをベースに、行政、都市管理、世論などのコア分野をカバーする34の政府AI応用を立ち上げてきました。
現在DeepSeekは、竜崗区スマートオフィスシステム「龙小i」アプリケーションを通じて、同区の2万人以上の公務員にサービスを提供中です。これにより、DeepSeekの思考が大幅に改善され、回答はより正確かつ包括的になり、政府業務にさらに価値のある参考情報を提供し、公務員のさまざまなニーズに迅速に対応することができたようです。
加えて、竜崗区の企業向けサービスアプリ「龙i企」でも正式にDeepSeek AIアシスタント機能が立ち上がり、行政手続き、オンライン相談、政策の解説など、便利な政府サービスを企業に提供しています。
宝安区:「腾讯混元+DeepSeek」と政府業務知識ベースを組み合わせる

宝安区は、テンセントの開発した言語モデルとDeepSeekを合わせた「腾讯混元+DeepSeek」にアクセスし、宝安区政府事務専用ナレッジベースと組み合わせました。
現在、宝安区の行政業務知識ベースは、区内14分野20業界にわたる3万以上の行政業務知識項目をカバーしています。 業務シナリオのニーズに合わせて「インテリジェントアプリケーション」を展開し、民生需要、企業サービス、行政事務室、社会統治など31の業務シナリオで実装されています。
宝安区政府のナレッジベースとテンセントのネットワーク検索能力を組み合わせることで、政府運営、企業サービス、市民生活体験の効率がさらに向上されます。今後も、正確性、リアルタイム性、安全性の面で継続的にアップグレードされています。将来的には、宝安区はテンセントなどのテクノロジー企業と緊密に連携し、住民サービス、コミュニティ管理、スマート高齢者ケアなどの分野における応用を拡大し、より豊かなAIイノベーションエコシステムを構築していくと意気込んでいます。
Source:
ShenzhenDaily:DeepSeek powers Shenzhen government services 深圳全面应用DeepSeek